外国出身選手が多くを占めるのは日本だけに限らない。31人の登録選手中、トンガは19人、サモアは18人が外国出身選手だ。その大半をニュージーランド出身者が占め、親や祖父母が代表国の出身で出場資格を得た。両国とも南太平洋に位置する小国で出稼ぎ労働者からの送金が主要な収入源。親の世代で移住した選手が親の母国で出場するケースが多い。一方、日本は外国出身の15選手全員が居住条件を満たして出場資格を得ていて、チームの成り立ちはトンガやサモアと異なる。

■小柄でも活躍できる

 もちろん、日本出身選手が世界各国の代表に選ばれることもある。本誌7月29日号で紹介したように女子選手では、東京都出身の小野麻子(29)が19年4月からオーストラリア代表として活躍する。

 前日本代表主将の廣瀬俊朗さん(37)は開幕前にアエラのインタビューでこう語っている。

「これからの日本は人口が減少し、外国出身の人と働く機会がどんどん増えると思います。日本ラグビーは、日本の未来の先を行っていると思います」

 前出の松島准教授は「ラグビー日本代表は共生のシンボルとして、多様性を考えるいい機会」と言う一方で、こう語る。

「報道などで外国出身選手たちが日本のために献身し、日本文化に愛着を持つという姿が盛んに強調されているのを見ると、彼らは多様性のシンボルでありながら、日本に尽くす姿勢がなければ代表として承認されないという息苦しさも感じます」

 多様なルーツを持った選手がいるという以外にも、ラグビーというスポーツそのものが多様性を体現している。出場する15人それぞれにポジションがあり、どんな体格の選手でも活躍の場があるのだ。例えばスクラムハーフで開幕から3戦連続で先発している流大(27)のように身長166センチ、体重71キロと小柄な選手もいれば、体重120キロの中島イシレリ(30)もいる。廣瀬さんは「多様なメンバーだから勝てるのがラグビーの魅力」と語る。

 リーチ主将は、開幕2日前の記者会見でこう語っている。

「今の日本代表は多様性のあるチーム。違う個性がお互いに影響を与え合って、毎年チームが強くなった」

 ジャパンの大躍進は、多様な個性を内包しながらも、「ONE TEAM」を実現できた証しでもある。(文/編集部・深澤友紀)

AERA 2019年10月21日号から加筆