あいちトリエンナーレへの補助金不交付を巡り対立する萩生田文部科学大臣(右)と大村愛知県知事。大村氏は法廷闘争も辞さない構えだ (c)朝日新聞社
あいちトリエンナーレへの補助金不交付を巡り対立する萩生田文部科学大臣(右)と大村愛知県知事。大村氏は法廷闘争も辞さない構えだ (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 文化庁が「あいちトリエンナーレ」への補助金を不交付にすると決めた。萩生田文科相と大村知事の対立構図は、臨時国会での与野党対立と相似形をなす。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。

*  *  *

 文化庁が、採択を決めていたあいちトリエンナーレへの補助金7800万円を、後になって全額不交付にすると決めた。

「これはあの加計問題と同じく、『萩生田案件』だ」

 不交付が明らかになった直後、ある野党幹部はそう語った。萩生田とは、先の内閣改造で初めて大臣ポストを得た萩生田光一文部科学大臣だ。

「この決定は安倍首相も同意し進められている。加計問題では『官邸は絶対やると言っている』『総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた』などと発言したとされる文書が、それこそ文科省から見つかり大騒ぎになった。文化庁は、その萩生田さんが大臣を務める文科省の管轄にある。官邸─大臣の決定に文化庁は従った格好でしょう」

 萩生田氏は安倍政権で官房副長官や党総裁特別補佐を務め、安倍首相の最側近の一人と言われている。また、日本会議を支援する超党派の議員によって構成される「日本会議国会議員懇談会」や「神道政治連盟」「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」などに所属。憲法改正の推進、女性宮家の創設に反対を掲げる極めて保守色の強い政治家の一人だ。

 当初、永田町では補助金の不交付決定の震源は、菅義偉・官房長官ではないかという臆測が飛び交った。8月2日の記者会見で最初に補助金交付を精査すると発言し、公的支援を打ち切る可能性を示唆したのが菅氏だったからだ。

 しかし、菅氏をよく知る関係者の一人は「菅さんはこの手の歴史観や表現の自由に関わる案件には興味ない」と関与を真っ向から否定。この問題が慰安婦など過去の歴史認識や表現の自由に関わるという性格上、主導したのは「安倍─萩生田」ラインだとした。

 不交付の理由について、萩生田氏は会見でこう主張している。

次のページ