統一会派を組む国民民主党の玉木雄一郎代表も「不透明な基準で事後的に不交付を決めるのは大問題だ。脅迫を助長し、表現の自由に対する萎縮効果を生むことも懸念される判断であり、臨時国会の議論で取り上げていく」と述べている。

 大村知事は元々自民党の衆議院議員だが、平成研究会(旧経世会)所属で、萩生田氏や安倍首相とは思想的に一線を画す。一方、あいちトリエンナーレをめぐって大村知事と対立している河村たかし名古屋市長は、「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」に所属するなど「安倍─萩生田」ラインに近い思想の持ち主だ。

 一連の騒動のきっかけとなったのは、開幕後に現地を視察した河村氏が「(この展示は)表現の不自由という領域ではなく、日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない」と抗議文を提出したことだった。それに対し大村知事は「河村氏の一連の発言は憲法違反の疑いが極めて濃厚だ」と反論してきた。

 河村氏は、すでに大村知事あてに提出している公開質問状への返答がなければ、市が負担する開催費用約2億円のうち、未執行分の支払いの留保を検討するとしている。

 補助金の不交付を巡る大村知事と萩生田氏、河村氏の対立は、臨時国会で火ぶたが切られる与野党対決の代理戦争の様相を呈している。(編集部・中原一歩)

AERA 2019年10月14日号より抜粋