決して、彼らがばかで無能なのではありません。東京などの大都市にいないために、新井紀子先生がおっしゃられた読解力と同様に、あまりにもanywhere型の人間とのコミュニケーション能力が低すぎるのです。

 世界中を駆け巡っているような、世界のどこでも生きていける人々を、我々の仲間ではanywhere型と呼んでいます。地方に育ち、地方の大学に通った若者の多くはこういうタイプの人と話したことがないから、彼らと会話ができないだけです。ましてやアメリカ人との会話となれば、変幻自在にグローバルテーマを扱う会話能力も求められ、途方に暮れる。地方で育つこと自体がハンディになってしまうのです。

 大学生を見たことのない若者に、「自分が大学生になった時のイメージをもって目指せ」という方が不可能でしょう。ましてや世界中からヘッドハントされながら年収3億円もらっている人なんてどんな人なのか、見なきゃ目標にしようがありませんわね。日本にもそういう人がたくさんいるのに……ですよ。

 このあたりの議論をすべてぶっ飛ばして都市圏の大学生の数を減らせなどと主張するのは、若者たちが人生を築きあげるのを無視、阻害しているとしか、僕には思えませんけどね。

AERA 2019年9月30日号

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ぐっちー

ぐっちー

ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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