サイズが合わない、どれが似合うのかわからないなど、ファッションにまつわる悩みは人それぞれだ。だが、そんな悩みをAIが解決してくれる日がやってきた。靴やメガネなど、多くの分野で活用が始まっている。AERA 2019年9月23日号に掲載された記事を紹介する。
【写真】最適なソールをAIで作製? 婦人靴売り場に登場した3Dプリンター
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伊勢丹新宿店、本館2階の婦人靴売り場。女子ならもれなく心躍るキラキラしたハイブランドの靴が並ぶ売り場に、8月末から一風変わったオブジェが置かれるようになった。実はこれ、オブジェではなくて3Dプリンター。デンマーク発のシューズブランド「ECCO(エコー)」のカスタマイズシューズを作ってくれる、未来の“靴職人”だ。
ただし、この“職人”が作るのは、靴そのものではなく、靴の心臓部とも言える、中敷きと靴底の間にあるミッドソール。世界の約5千人の足の形や歩行のデータと、最適なミッドソールの関係をAIに学習させ、特殊なシリコーンを素材にしたその人にぴったりのミッドソールをその場で作ってくれる。
まずセンサーを内蔵した靴を履いてウォーキングマシンの上で30秒歩行したのち、3D計測器で足の形を立体的に計測。遠慮のない未来の“靴職人”の見立てによると、自分の足は、もろ典型的な日本人といえる「幅広、甲高」タイプと出た。
一方歩き方は、暴れる右足を左足が支える「左軸」タイプ。歩行時の左右の高低差をミッドソールが解消し、左右の足がバランスよく動く、効率のいい歩行ができるようになるという。
どっかの靴職人みたいに注文をため込んだり、美女と密会したりなんてこともなく、3Dプリンターは黙々と正六角柱を隙間なく並べたハニカム構造のミッドソールを作製。約1時間で自分だけのそれが完成した。
さっそく履いて、“職人”のお手並み拝見だ。ミッドソールが変わっただけなのに、吸い付くような履き心地で、靴の存在感がほぼゼロに。同じようなレザースニーカーを持っているが、長時間歩くと感じるかかとのこすれも、指の痛みもない。
こちらお値段総額8万2080円。決して安くはないが、合わない靴の痛みほどつらくて情けないものはないわけで。開始後間もないが、すでに多くの人が計測を体験した人気のサービスとなっている。
現在、このミッドソールを装着できるのは10色の革製スニーカーだけだが、ゴルフシューズと男性用ビジネスシューズは開発中、いずれはパンプスなどにも装着できるようになり、「#KuToo」問題をAIが解決する日も遠くない。
もうひとつ。こんなAIも試してみた。メガネチェーン「JINS」が開発したオリジナルAI、「JINS BRAIN」だ。同社のスタッフ3千人が、あらかじめ30万件のメガネをかけた人の写真から似合い度を判定。そのデータをAIが学習して、店舗の専用タブレットに映った客のメガネの試着姿から、自動的に男女の視点別の「似合い度」をおしえてくれる。