今や日銀は320兆円ものバランスシートを積み上げて民間企業の上場株を保有していますが、結局景気なんてよくなっていません。詭弁は呈することができます。「個人消費、GDPなどはどーでもいい。景気の基準は有効求人倍率のみだ」と今の安倍政権のように振り切ってしまうと、有効求人倍率さえよければいいので、政府の景気対策は有効だし、中央銀行が株を買っていることも間違いない、となるわけですが、これはまさに誤謬であります。

 読者の皆様の中にも景気対策が中央銀行の職務である、と勘違いされている向きがあるのではないでしょうか。あのギリシャ危機のさなかにドラギ総裁が言ったこと……「中央銀行は金融政策を行う主体であり、財政政策を行う役割は負わない。ECBが財政政策を行うことは許されない」との発言を繰り返します。中央銀行の元来の責務を理解するうえで、極めて重要な示唆を与えています。

AERA 2019年9月23日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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