ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 何回も書いてきたテーマですが、国家による財政政策などの政策と、日銀などの中央銀行による金融政策との関係に対し、皆様は大きな誤解をされています。ちょうど今トランプ大統領がライブでやっていますが、彼の言っている景気対策というのは政府がやる政策であって、そのために財政政策だったり、減税だったりを実行するわけです。

 一方でパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を名指して批判し、金利を下げろと言い出しているのは、決定的に間違っています。景気対策は、中央銀行の仕事ではありません。

 FRB、日銀など中央銀行の仕事とは「自国通貨の価値を守ること」です。それ以上でも以下でもありません。トランプ大統領や安倍首相は、中央銀行の元来の仕事ではないことをやらせようとしているという点で、そもそも勘違いしている。財政政策と金融政策の違いという、政策のABCのAについて全く理解していないということです。

 インフレ目標が日銀の目標になりうるのは、それは円という通貨価値を棄損しないための政策なので、中央銀行による職務になりうるわけです。日本では白川さんがそのあたりをがっちり守っていましたが、黒田さんが総裁になってから話がおかしくなってきた。株価が上下どっちに行くか、なんてことは中央銀行の仕事ではありません。株式市場は、一企業による業績が反映された株価の集合体に過ぎないわけです。その株式市場に、通貨価値についてのみ唯一責任を取るべき存在の中央銀行が介入するべきか、と言えばNOに決まってます。ましてやトランプ大統領のように「習近平とパウエル議長とどっちが本当の敵なのか」などと言い出すのは、中央銀行の責任の範囲を完全に逸脱した議論です。

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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