今年2月には、自民党衆院議員の平将明(たいらまさあき)がオリヒメをテレワークツールとして使用することを検討していた。参議院でも導入は検討されている。

「舩後さんが視線入力した言葉や動作指示によって、オリヒメは挙手や拍手、少し遅れますが音声での発言ができる。また、車いすの上にオリヒメをとりつけていれば、国会議事堂のあらゆる角度の風景を、舩後さんはPC画面で見ることができます。人型ロボットの存在により、周囲にも本人の人柄や意思が、伝わりやすくなります」

 表情や声で意思表示が難しい重度身体障害者は、人格が見えづらい。偏った見方が広まるのは無理はないとも言える。だが、そこにテクノロジーが助け舟を出せるかもしれない。

 国会本会議で文教科学委員担当に指名された舩後は抱負を語る。

「81年が国際障害者年となり、05年には障害者自立支援法が生まれ、今回重度身体障害者が国会議員になった。30年前に比べ世の中は大きく変容しました。私は10年後、20年後の未来を想像して、障害者に対する偏見を教育で変えたい。幼いうちから差別意識を持たないインクルーシブな教育のありかたを提案していきたいと思っています」

 現在日本には、約936万6千人(18年、厚生労働省推計)の障害者がいる。たとえ、今、自分が健常者であっても、いつ病に倒れるかわからない。生まれてくる子が病気や障害を持っているかもしれない。

「多様性はいつの時代にもある。変わったのは、それを受け入れる土壌が広がったということ」と吉藤は言う。

 賛否両論、物議を醸しながらも議員は国民の意思により選ばれた「代表」だ。2人が活躍する環境を整えるための変化は国会の内外ですでに動き出している。舩後、木村の任期は6年。この先、さらにどんな変化が訪れるか。

 舩後さん、今の思いを短歌にするなら? 長く短歌を趣味とする舩後に、取材の最後に聞くとこう返ってきた。

「同胞(はらから)の大きな希望胸に入れ 日本変えると“押忍”の気合を!」

(文中敬称略)(フリーライター・玉居子泰子)

AERA 2019年9月9日号より抜粋