「舩後さんを副社長にすると、当初職員から驚きの声はありました。でも彼が当事者目線で必要な介護・看護が何かを教えてくれたことで、従業員の意識は驚くほど変わり、会社は成長しました。全身麻痺でも、社会復帰をし、周囲を変えることはできる。舩後さんが国会議員に挑戦すると言うなら、私たちはサポートするだけです」

 現在、舩後のコミュニケーション方法は、介助者による文字盤の読み取りか、センサーのチューブを噛むことでPCに文字入力をするかのどちらかだ。議員として必要な原稿は、事前に準備すれば意思は伝えられる。ただ、どうしても直接の対話には時間はかかる。

 このハンディをテクノロジーの力で埋めようという人がいる。分身ロボットOriHime(オリヒメ)の開発者、吉藤健太朗(31)だ。目の部分にカメラを搭載した高さ20センチ余りのロボット、オリヒメは、ごく簡単な操作で手を動かしたり、発話したりできる。

「これからは、高齢者が増え、体の自由がきかない人が増えることを踏まえて、政治を考えるべき。何でも人並み以上にできる“万能感のある人”しか政治家になれないことに、私は“弱さ”を感じていました。2人の当選で、『歴史が動く』と直感しています」

 もともと病気や入院などで動けない人の孤独を解消したいと2010年にオリヒメを作った。現在、大手企業や病院、学校施設などで、テレワークや病人や不登校児と家族友人をつなぐツールとして約500台の利用がある。

 さらに吉藤は、ALSをはじめとする難病患者のコミュニケーション支援をしたいという思いから、透明文字盤をデジタル化した視線入力装置OriHime eye(オリヒメアイ)を開発。これを使えば、従来の意思伝達装置による文字入力より格段に速くPCに文章が書けるという。今、舩後はこの二つのテクノロジーを国会に持ち込みたいと考えている。

「舩後さんはとても熱心に練習されています。オリヒメの操作に早く慣れようと、何時間も練習をされるんです。私が『少し休みましょう』と言っても全然やめない(笑)」(吉藤)

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