「私たちは日本製品を販売しません」と記されたスーパーの掲示。日本製ビールなどが売り場から撤去された/7月6日、ソウル市陽川区で (c)朝日新聞社
「私たちは日本製品を販売しません」と記されたスーパーの掲示。日本製ビールなどが売り場から撤去された/7月6日、ソウル市陽川区で (c)朝日新聞社
光化門広場で開かれた日本政府の輸出規制強化などに反対する集会。「ノー安倍」と書いたプラカードが一斉に掲げられた/8月15日、ソウルで (c)朝日新聞社
光化門広場で開かれた日本政府の輸出規制強化などに反対する集会。「ノー安倍」と書いたプラカードが一斉に掲げられた/8月15日、ソウルで (c)朝日新聞社

 ここ数十年で最悪と言われる日韓関係。不買運動や現地のデモ活動の様子が報道されるが、韓国の市井の人々はどう考えているのか。朝日新聞前ソウル支局長の牧野愛博が報じる。

【写真】光化門広場で開かれた日本政府の輸出規制強化などに反対する集会

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 拙著『ルポ「断絶」の日韓』でも書いたが、韓国の人々にとって日韓関係は非常に特殊な事情がある。昨年、日本を訪れた韓国人は約750万人。実に国民の7人に1人が来日した計算で、「日本が好きだ」と考える韓国人はとても多い。そして、日本人に比べると自由な行動を好むと言われる韓国人なのだが、日韓関係となると、途端に「ヌンチ」を見てしまう(空気を読んでしまう)のだという。

 そこには、日本統治時代に辛酸をなめた先人たちへの敬意を忘れてはいけないという事情や、解放後に韓国で起きた「親日派」と「反日派」の政治的な摩擦から「親日派は悪で、反日派は善だ」という社会的なフレームワークができあがっている背景、日米韓の協力を常に破壊したいと願っている北朝鮮による離間政策、経済成長を達成した韓国人の間に芽生えた日本への対抗意識などが複雑に絡み合っている。

 そして意外なことに、集団主義ではなく、個人主義を好むとされる若い世代にも、この構図は当てはまっている。

 今回の不買運動の特徴の一つは若い世代の参加だとされる。確かに、日本製ビールもユニクロも、若者がヘビーユーザーだと言われてきた。

 知人の一人によれば、知り合いの中学1年の長女が突然、両親に「日本系の小売店で買えば3個1千ウォンだったけれど、韓国製品の2個1千ウォンのものを買った」と報告したという。

 日本製品の不買運動を勧める韓国のインターネットサイト「ノーノー・ジャパン」をのぞいてみた。サイトには不買を呼びかける日本製品と、代替できる韓国製品がずらりと並んでいる。ボールペン、消しゴム、薬品などのほか、寿司屋まである。韓国のニュース番組では、サイトの開設者だという若い男性が「昔から何度も不買運動はあった。でも、単に買うなと言うばかりで長続きしなかった。対案を示す必要があると思った」などと語っていた。

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