「全部を運のせいにしないで、地道に続けてきてよかったな、と。『見てくれている人が必ずいる』と信じ続けた結果の『引き寄せの運』でもあったのかなと思いますね」

 そこからはトントン拍子。「真田丸」の脚本を担当した三谷幸喜さんの舞台や、出演ドラマを見た脚本家の古沢良太さんとの縁で月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」に出演……。一つ前の現場が次の現場を呼び込むという連鎖。小手さんは言う。

「見る人の話題になるためには、現場現場での縁に対し、僕が『その出会いに見合った自分』でいないと、そもそも声はかからない。そのための努力をという気持ちは常にある。努力と運は両輪、だと思います」

 その「努力」で小手さんがいつも心掛けていることがある。

「ちょっと自分には無理かな、とたじろぐような、ワンランク上からのオファーでも、やってみる。それを繰り返すことによって、自分のレベルが上がってきたという感覚はあります。自分が種をまいて得たチャンスでも、芽吹くか芽吹かないかはやはり運だったりする。芽が出たときにすぐにガッ!とそれをつかむ反応の良さ、つまり『無理めなお仕事』でも飛び込んでいく『瞬発力』は、絶対に欠かさないようにしてきましたね」

 ある「ラッキー」を享受したとして、それがその人の「努力や実力に見合った運」なら、「さらに強い運」を招くことができるのでは、と小手さん。逆に、得た運以上のものがその時の自分になければ、「ただのラッキー」で終わってしまう、とも。

「やってきた運に対して恥ずかしくない自分でいよう、と思うようになってから、運が向いてきた気がするんです。運などどうでもいい、と思っていた若い頃よりも、運に対してちゃんと敬意を表している(笑)今のほうが、仕事においてはすごく恵まれていると感じています」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年9月2日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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