小島慶子「表現の不自由展、少女像の隣に名古屋市長の像を置いたらどうなっただろう」

連載「幸複のススメ!」

小島慶子AERA#小島慶子
あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」。政治家の中止要請について会見する大村秀章・愛知県知事 (c)朝日新聞社
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あいちトリエンナーレの「表現の不自由...

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】政治家の中止要請について会見する大村秀章・愛知県知事

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 日本国民の心を名古屋市長が代表していいのか問題。「みんなも言ってるよ!」の“みんな”って誰なんでしょう。公的な立場にあるからといって、私見を国民の総意みたいに言わないでほしい。

 あいちトリエンナーレ2019の「表現の不自由展・その後」で展示された慰安婦を象徴する少女像について、河村たかし名古屋市長は「日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない」と発言しました。これに対し大村秀章愛知県知事は「検閲ととられても仕方がない。憲法違反の疑いが極めて濃厚」と批判しています。

 少女像の展示には連日批判や苦情、嫌がらせの声が殺到し、同展はわずか3日間で中止。ファクスで脅迫状を送りつけた会社員の男が威力業務妨害容疑で逮捕されました。

 時を同じくして、アメリカではテキサス州とオハイオ州で銃乱射事件が相次ぎ、移民を標的にしたヘイトクライムと大統領の人種差別発言との関連が取りざたされています。アレクサンドリア・オカシオ=コルテスさんら非白人の民主党女性議員4人に対する「国へ帰れ」という発言もひどいものです。トランプ大統領の就任以降、白人至上主義や女性差別がお墨付きを得て勢いづき、暴力がエスカレートしているといいます。

 河村市長は、少女像の展示により「名古屋市や愛知県、日本が、従軍慰安婦の強制連行はあったと認めたと誤解を受ける」などと述べています。少女像を不快に思う自由はあるけれど、それを日本国民の総意であるかのように言い、展示をやめさせるのは矩(のり)を踰(こ)えています。「表現の不自由展・その後」、もし少女像の隣の空いている椅子に、渋面を作って腕組みをする河村市長の像を置いたらどうだったかな。これなら氏が心配している誤解はなさそうです。なんと言うのか、感想を聞いてみたかったです。

AERA 2019年8月26日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中

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