トランプ大統領の意向を受け、在日米軍駐留経費の日本側の負担を3~5倍に増額することを要求する可能性を示したとされるボルトン米大統領補佐官 (c)朝日新聞社
トランプ大統領の意向を受け、在日米軍駐留経費の日本側の負担を3~5倍に増額することを要求する可能性を示したとされるボルトン米大統領補佐官 (c)朝日新聞社
出港を待つ米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」。甲板を取り囲むように乗員が整列していた/2017年5月、神奈川県横須賀市 (c)朝日新聞社
出港を待つ米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」。甲板を取り囲むように乗員が整列していた/2017年5月、神奈川県横須賀市 (c)朝日新聞社

 トランプ米大統領が日米安保体制に不公平を強調。すでに日本は多額の米軍駐留経費を負担しているにもかかわらず、在日米軍駐留経費の増額を要求する可能性も出てきた。日本側はどのような姿勢で同盟維持に向き合えばいいのか。

【写真】出港を待つ米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」

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 15年に合意した「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ)では、日本に対する武力攻撃が発生した場合の作戦構想として、防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止排除などの作戦には「自衛隊がプライマリー・リスポンシビリティ(一義的責任)を負う」と定めている。これでは「何のために米軍に基地を貸し、巨額の経費分担をしているのか」との疑問も出るから、日本語訳では自衛隊が「主体的に実施する」とごまかしている。

 自衛隊が日本防衛に一義的責任を負うのは当然ではあるが、当然のことを何度も繰り返して指針に書き込んだのは訴訟社会の米国的な方策だ。もし米軍が何もしなくても責任を問われないようにしている。この指針はすでに自衛隊が日本防衛に主たる責任を負っている実態を追認した形だ。

 トランプ氏は「安保条約破棄」もちらつかせ、日米交渉のカードにしようとするように見える。だが米海軍にとって横須賀、佐世保が使えなくなると大変だ。軍艦は年におおむね3カ月程はドックに入り点検、修理をするが、グアム島のアプラ港にはドックはない。ハワイのパールハーバーにはドックがあるが、背後に工業がないから、潜水艦などの点検、整備しかできないようだ。

 横須賀、佐世保には巨大なドックがあり、熟練した技師、工員が揃い、部品の調達も容易だから、安く早く整備ができる。第7艦隊がそこを使えなくなれば米本土の西岸まで後退する必要が生じ、米国の西太平洋、インド洋の制海権保持は困難になりそうだ。

 日本には5万4200人の米軍将兵がいて最大の受け入れ国だ。2位のドイツが3万7900人、3位の韓国は2万8500人、4位はイタリアの1万2700人だ。冷戦期の西ドイツでは米陸軍はソ連軍の主要な侵攻経路の一つとされたフルダ渓谷に布陣しフランクフルトを守っていた。韓国ではソウル北方の議政府(ウイチョンプ)に米陸軍第2師団が展開していた。米軍に直接守られていた西ドイツ、韓国に対し、日本での米軍はソ連に近い北海道ではなく最も安全な沖縄に基地の70%が集中。兵員の大半がそこで待機して海外への出動に備えてきた。

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