「この状態で余裕で30分座っていられるようになれば、筋力がついた証拠。首や背中・腰にかかる負担が減少し、頭痛や肩こり、腰痛、血液循環が滞ることによる冷え性などの改善も期待できます」(碓田さん)

 本誌が7月下旬に行ったアンケートでは、「筋トレを始めた理由」について、「肩こり、腰痛やぎっくり腰、ぎっくり首の解消のため」(東京都・43歳・女性)、「マラソンで膝の故障などに悩み、トレーナーに相談したら筋肉をつけるように言われた」(神奈川県・50歳・男性)といった意見も目立った。

 金融機関で働く女性(47)が筋トレを始めたきっかけは、膝痛だった。2年前、長く歩いた翌日に左膝が痛くて歩きづらくなり、整形外科クリニックへ。レントゲンでは膝の軟骨がややすり減っており、「加齢による変形性膝関節症」と診断された。

 膝に直接ヒアルロン酸を注射する治療でだいぶ痛みは軽減したものの、歩くと痛みが出る。医師からは「膝の関節のすり減りは元には戻ることはないが、膝を支える太ももなどの筋肉を鍛えることで膝が安定し、楽になるかもしれない」と筋トレをすすめられた。だが、筋トレなんてまどろっこしい方法はやっていられないと思い、マッサージや鍼灸、サプリメントといろいろ試してみた。ところがどれも効果がなかった。そこでしかたなく筋トレをやってみたら、1カ月ほどでだいぶ痛みが引いていることに気づいたという。女性は言う。

「私は運動を始めても途中で飽きてしまって、続いたことがなかったんです。でもクリニックでは理学療法士が、まず座って膝を曲げ伸ばしするだけのどこででもできる大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)が鍛えられる簡単な筋トレだけを教えてくれたので、続けることができた。継続するにはシンプルが一番だと実感しました」

 前出の碓田さんは言う。

「筋力の低下は、肩こりや腰痛、背、膝の痛みなどさまざまな不調を引き起こします。適切な筋トレは、こうした症状の改善や予防につながります」

(ライター・谷わこ)

AERA 2019年8月12・19日合併増大号より抜粋