「経営者がどんなに完璧なビジネスモデルを作ったとしても、投資家の心を動かせなければ資金調達はできないの。他人の心を動かして仲間になって物事を動かすにはまず自分たちがワクワクしてないと絶対に無理。そうなるにはチームで何を目指しているのか、本音でぶつかりあって、作っては壊すプロセスを繰り返す以外ないんだよ」

 WAC WACでは、メンターの三上高広さん(28)が「一旦ビジネスプランから離れて、自分の過去の出来事やその時の心の揺れ動きを振り返ってみよう」と提案。これは、就活の自己分析でもよく使われる手法だ。神戸女学院高等学部1年の伊藤里彩さんは、「自分について語り合うなんて嫌だな」と感じた。

「ビジネスのことを知っていたりすると受験に有利かなと思って参加したのに、なんでそんな無駄なことしなくちゃいけないのって」(伊藤さん)

 だが、他のメンバーの話を聞くうちにふっと心が動いた。

「最初は、私以外のメンバーが全員海外経験者だと知って、うちは裕福じゃないしと思ってました。でもメンバーの『英語を学びに行ったんじゃなくて視野を広げるために行った』という話にハッとしたんです。私はこれまで自分が行けない理由やリスクをいっぱい並べてたけど、それって自分にブレーキをかけてたんだって」(同)

 横浜雙葉高校2年の宇田江里さんは「生まれてからずっとハッピーで、悩みなんかなかったつもりだった」。だがやはり仲間の話を聞くうちに、自分の内なる声に気づいた。

「うちは両親がともに社長で自分にとっては凄すぎる存在。そういう親に甘えて、のほほんと生きてきたけど、心の奥底では私は将来、親のようにはなれないんじゃないかと不安だった。ほんとは私も目標に向けて頑張りたいのに、それができてないことが苦しかった」(宇田さん)

 この気づきが、ブレークスルーにつながった。口火を切ったのは宇田さんだ。

「私たちのペルソナ(商品やサービスの典型的なユーザー像)って、『自分のことを知らない』ってことに気づいていない人じゃない? 昨日までの私たちがそうだったみたいに」

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