ラグビー用車いすは選手の体形や障害に合わせて作られ、一台一台異なり、整備もマニュアル通りにはいかない。三山は選手とコミュニケーションを取る中でちょっとした異変も見逃さない。例えば先日は日本のエース、池崎大輔(41)の「タイヤが右側だけ重い」との言葉から、ほんの数ミリ、車軸が曲がっていることを突き止めた。

「車いすのせいでいいプレーができなかったら悔しいですから」

“整備の神様”とも称される確かな技術で選手たちが描く理想のプレーを実現させる。現在、修理や調整のほか、使用中の車いすの改造や新車の受注も行う。三山の工房を訪ねた競技者の今野匡人(32)は言う。

「事故の後、ひざが曲がらない僕が乗れるような車いすを用意してくれた。選手の要望をかなえてくれる、ほんと神様ですよ」

(文中敬称略)(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年8月5日号より抜粋