コンテンツの安定供給には、オリジナルで作り上げる作品が必要不可欠であり、舞台はコンテンツ争奪戦からクリエイター争奪戦へ移行──。冒頭のシーンはそれを象徴するかのようだった。映像メディア総合研究所代表の四方田浩一さん(54)は、こう言い切る。

「一言でいうと新しいメディアと従来メディアとの構図です」

 つまり、ネットフリックスのような新しい配信サービスに対して、従来のメディアはどう対抗するのか。“オリジナルをつくる”というコンテンツの領域に大きく乗り出した配信サービスに対して、従来メディア側ともいえるコンテンツの権利者がどう対応するのかという、これまでとは異なる対立軸だ。

「メディアの影響力が新しい配信の方にシフトした。それによってバランスが変わったのが、今回の現象です。ネットフリックスのようなグローバルな流通ブランドに対抗できるのは、コンテンツ業界のブランドでは、ディズニーしかない」

 オリジナル作品強化の流れの中で、ネットフリックスは「プロダクションI.G」「ボンズ」などのアニメ制作会社と包括的業務提携契約を締結した。ネットフリックスの日本国内の実写・アニメ全体のクリエイティブを統括するコンテンツ・アクイジション・ディレクターのジョン・ダーダリアンさんが言う。

「アニメのプロダクションのエコシステムを作りたいと思っています。そのためにプロダクションのスタジオやクリエイターと組んでいかないといけない。強いパートナーを持つことで素晴らしいコンテンツを作ることができる」

 ネットフリックスは現在、190カ国以上でサービスを展開。映像コンテンツに乏しい国や地域にとってネットフリックスは大きな魅力となるが、日本のようにテレビを中心とした高度かつ独自に発達したエンタメ産業が成熟した国の視聴者に対して、ローカライズされたサービスを提供しても、一気呵成に普及するのは難しい。むしろ、日本というマーケットはサービスの展開先であると同時に、コンテンツの供給源、制作拠点という側面からの魅力も大きい。

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