だが、同じ週末、ソウル市江南区の複合施設で開かれた「ソウル酒フェスティバル2019」の会場は、日本酒の試飲を楽しむ韓国人の若者らで大賑わいだった。入場者は過去最高の約7千人で、2日間で販売予定だった日本酒や焼酎が1日で完売。主催者は「影響は全くありません」と断言した。

 ソウルの二つの風景。どちらが本質なのか?

 日韓関係に詳しい韓国の専門家はこう口をそろえる。

「多くの韓国人にとって、歴史問題などの日本政府への不満と、日本製品や個々の日本人に対する好印象が矛盾しなくなって久しい。不買呼びかけは一過性で、盛り上がらないでしょう」

 韓国では、05年、島根県が「竹島(韓国名・独島)の日」を制定したときなど、過去にも大規模な日本製品不買が繰り返し呼びかけられてきたが、いずれも尻すぼみで終わった。

 一方で、韓国メディアは、規制強化発表後、一部スーパーやコンビニの日本製ビールの売り上げが10~20%台減少したと伝える。世論調査会社リアルメーターが11日に発表した世論調査によると、国民の67%が今後不買に参加したいと回答した。「この状況が長期化する可能性を排除できない」(文在寅大統領)なか、今後の展開は見通せない。(朝日新聞ソウル支局・武田肇)

AERA 2019年7月22日号