夜中に雨が降ったので少し心配していましたが、現地に到着すると仕掛けは無事流されずに残っていました。

 川底から仕掛けをそっと引き上げ、ドキドキしながらセルビンの中の状態を確認します。私のシナリオではここで大量の魚を捕まえて大団円のはずでしたが、現実はそう甘くはありません。

 せっかくの仕掛けは空振りに終わり、調査隊一同に落胆のムードが漂います。川の中を何匹もの魚が悠々と泳いでいく姿を見ると、悔しい思いがこみ上げます。

 最終ミッションを終えて少しだけ時間が余ったので、自由遊びの時間を設けることにしました。

 てっきり鴨川デルタ恒例の飛び石渡りでもするのかなと思いきや、子どもたちは生き物探しの続きを行いたいとのこと。

「文さん、またシマイシビル見つけた!」

 ある女の子は次々と石をめくっては、そこにシマイシビルが張り付いていないかひたすら確認していました。

 プロジェクト開始当初は「気持ち悪いから見るん嫌や」と敬遠していたことを考えると、大きな変化です。さすがに手で直接触ることはできないようでしたが(笑)。

 探究堂の取り組みは単に知識を増やすことが目的ではありません。プロジェクトを通じて、今までの「ものの見方」に少しでも変化が生まれることこそが探究の本質であると考えています。それは周りの世界との接し方が変わることに他ならないからです。

 ぷれりかキッズの行動の変化を実感し、充実した6週間となりました。(文/山田洋文)

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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