日本ではこういうことがよくあります。最大の原因は、失敗したことをしっかり受け止め、次は失敗しないようにする、という当たり前のことが日本人は苦手なのです。失敗したと認めれば増田先生がだめだったということになり、彼の失点なり汚点になる。そう考えてそこまで突き詰めない。失敗しているのに誰も責任を取らず、同じ失敗を何度でも繰り返す、という構図にはまっていくわけです。最近の企業を取り巻く事件もみんなこれですね。検査ごまかし問題も、東芝の粉飾決算も、最初の時にそれはだめ、と総括しておけばよかった。ただ、それをやってしまうと当時の社長などにダメ印を押すことになり、その本人が会長かなんかでのさばっているので、ますますやりにくい。だから同じ失敗を繰り返すのです。

 帝国陸軍の伊地知幸介少将が旅順攻略の際、同じ作戦で何回も玉砕したのに、本人は勿論誰もそれを失敗だ、と認めようとしない。結局何回も同じ失敗を繰り返し、若い兵士の命を散らしまくって、児玉源太郎がわざわざ階級を下げ、自ら指揮を執りに行くという荒療治をするまで誰も手を出せなかった。これは石破茂・元地方創生相から直接聞いた話ですが、失敗続きで死屍累々の地方再生案件に対し、別に責めないから、一つでいいからこれは失敗したという例を挙げよ、と指示したのに、報告してきた自治体は皆無だったのです。破綻した青森市アウガ、アルネ津山などを擁する自治体も、です。……日本はだめですね。

AERA 2019年6月3日号

著者プロフィールを見る
ぐっちー

ぐっちー

ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

ぐっちーの記事一覧はこちら