引退を発表した上原浩治 (c)朝日新聞社
引退を発表した上原浩治 (c)朝日新聞社

 ルーキーで20勝の鮮烈デビュー。メジャーではワールドシリーズの胴上げ投手。だが上原選手の本当の凄さは、与えられた役割を全うし続けたことにある。

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 途中、何度も声を詰まらせ、ハンカチで涙を押さえた。

「えー、本日をもちまして、21年間の……。現役生活を終えたいなと思います」

 プロ野球巨人の上原浩治投手(44)が5月20日に東京都内で記者会見を開き、現役引退を表明した。プロ野球解説者で、上原選手と同時代に阪神のエースを務め、上原選手と直接対決したこともある藪恵壹さん(50)は、驚きを隠さない。

「シーズン途中の引退発表は異例中の異例。まだ今シーズンは戦力として戦うと思っていましたから」

 上原選手は1998年秋のドラフトで巨人を逆指名し、ドラフト1位で入団。ルーキーイヤーに20勝(4敗)を挙げ、最多勝と最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率のタイトルを獲得し、新人王と沢村賞に輝いた。04年にアテネオリンピックの日本代表に選ばれると、06年のワールド・ベースボール・クラシック、08年の北京オリンピック代表にも選出され、国際大会でもチームを牽引してきた。日本では先発のイメージが強かったが、07年には巨人でも抑えを任され、32セーブを挙げている。

 09年には海外FA権を行使し、ボルティモア・オリオールズに移籍。大リーグでは4球団を渡り歩いたが、なかでもボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズに出場し、日本人初の胴上げ投手になるなど、注目を集めた。

 昨年、10年ぶりに古巣の巨人に復帰すると、7月には日米通算で史上初めて、100勝、100セーブ、中継ぎを評価する記録の100ホールドを達成した。日米通算748試合で134勝93敗128セーブ、104ホールド、防御率2・94。勝利数だけを見ると往年の巨人のエース投手に比べ少し見劣りするが、

「前人未到の100勝、100セーブ、100ホールドを評価する基準はないですが、日本プロ野球名球会入りに値する成績でしょう」(前出の藪さん)

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