上原選手は引退会見でこの最終成績を問われ、

「どのポジションも全うしたわけではなく、中途半端に先発、中継ぎ、抑えとやっちゃったかなという感じですね」

 そう謙遜して答えた。

 だが、千葉商科大学専任講師(労働社会学)で、『社畜上等!』など、働き方に関する著書を多数持つ常見陽平さん(45)は、そこに上原選手の人気の理由の一つがあると話す。

プロ野球の投手はもちろんスペシャリストですが、上原選手は先発から中継ぎ、抑えと、どんな役割でも結果を出した。置かれた場所で咲くというゼネラリストっぽいところが、サラリーマンの共感を呼んでいるのではないでしょうか」

 そして、こう続けた。

「入団1年目の99年、巨人の松井秀喜選手と本塁打争いをしていたヤクルト・ペタジーニ選手への敬遠指令に涙を流して悔しがり、引退会見でも涙を隠さなかった。派手なガッツポーズなど、感情むき出しの人間臭さが上原選手の愛される一番の理由だと思います」

 その人間臭さの根底にあるのは、野球エリートにはない上原選手の「雑草魂」にほかならない。引退会見で「野球生活の中で原動力となっていたものは何だったのか」と聞かれた上原選手は、こう答えた。

「それはもう、負けたくないという気持ちと反骨心ですね。もう、それだけです」

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2019年6月3日号より抜粋