■取捨選択するためには?

 取捨選択するために、以下の4つを意識すると心に余裕が出て、選択肢の幅が広がり判断しやすくなります。

・「〇〇したほうがいい」は「ない」

 母親同士の会話で「〇〇したほうがいいらしいよ」とよく聞きます。その「したほうがいい」は本当でしょうか。例えば「母乳にしたほうがいい」と言われ、母乳の利点を聞くと納得します。しかし、母乳が出にくい場合や事情があって粉ミルクにする場合はどうでしょう。母乳育児をしている友人の前で粉ミルクを飲ませることに「母親として失格なのではないか」と葛藤する母親もいます。しかしそれは違います。各家庭のライフスタイルに合わせればいいのです。母乳でも粉ミルクでも、どちらでもいいのです。命と生活を守ること以外で「〇〇したほうがいい」は「ない」。いろいろな選択肢があるということを知りましょう。

・心の距離にワンクッションを置く

 母と子どもの心の距離は、とてもとても近いです。それは当然のことなのですが、いつも近いと「判断」しなければいけないときに迷いが出ます。

 例えば、うつ伏せが苦手な赤ちゃんの母親に「なぜうつ伏せをしないの?」と聞くと「泣いてかわいそうだから」と答えます。泣かせてまでさせなくちゃいけないのか?と思う気持ちは、同じ母親として共感できます。しかし、ここで心の距離にワンクッション置いてほしいのです。うつ伏せは、これから赤ちゃんが獲得していく、座る、ハイハイ、立つ、歩くという行動の基本動作になります。うつ伏せをし始める月齢に練習すると体幹が育ち、その後の発達にいい影響を与えます。ただ、母子が一体化していると、かわいそうが先に立ちその大切さに気づけません。ワンクッション置いて考えると、「1回30秒からでいいから、練習してみよう」とスタートできるはず。適度な心の距離が取れるようになってくると、必要なものを取り入れることができるようになっていきます。

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「ベスト」にとらわれない