太陽系のはるか向こうの観測には宇宙望遠鏡が活躍する。ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたM83銀河。回転花火のような渦巻きが特徴だ(NASA/ESA/The Hubble Heritage Team[STScl/AURA])
太陽系のはるか向こうの観測には宇宙望遠鏡が活躍する。ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたM83銀河。回転花火のような渦巻きが特徴だ(NASA/ESA/The Hubble Heritage Team[STScl/AURA])

 NASA主任科学者のジェームズ・グリーン氏が、新たな宇宙ステーションを月周回軌道に設置する計画を発表した。月・火星探査の有人拠点となる、その名も「ゲートウェイ」。現在も、ISSに参加している日本、欧州、ロシア、カナダの各国を中心に、技術の検討を繰り返している。

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 施設を構築しても、実際に月や火星での滞在型有人探査を実現するには、気候や地形、地質や資源といった天体の性質を事前に把握する必要がある。そのため、各国が同時進行で両天体の無人探査を活発化している。

「これまで驚くほどの数の探査が行われてきた月でさえ、解明されていないことが多い。もう一度、月に戻り、これまでとは別の地域でのサンプルを持ち帰るなどして、さらなる知見を深めたい」(グリーン氏)

 日本は、月面へのピンポイント着陸を実証するための月着陸機「SLIM(スリム)」を21年度に打ち上げる。さらに、23年度にはインドと協力し、月の極地に存在する水や氷の利用可能性を確認するための極域探査を計画している。

 今年1月に世界で初めて月の裏側に無人探査機を着陸させた中国も、月の極域探査を実施予定だ。日本の宇宙ベンチャー「ispace(アイスペース)」が進めるプログラム「HAKUTO(ハクト)−R」が21年半ばに独自開発の探査機を月面に着陸させ、探査車を走らせる計画もある。

 火星の探査計画も目白押しだ。米国が18年11月に着陸を成功させたプラットホーム型の探査機「インサイト」は現在、地殻やマントルなどの内部構造の調査を進めている。12年から地上を動き回って探査を続け、走行距離が20キロを超えた無人探査車「キュリオシティ」の最新型後継車「マーズ2020」を20年に火星へ送る計画もある。

 同じ20年には、ESAがロシアと共同で、中国が単独で無人探査車を火星へ向けて打ち上げる。2117年までの火星移住構想を持つアラブ首長国連邦も、初の火星探査機を打ち上げることになっている。

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