探査機や衛星などによる火星の無人探査想像図。収集した情報を足がかりに、有人探査へと移行する(写真:JAXA/池下章裕氏提供)
探査機や衛星などによる火星の無人探査想像図。収集した情報を足がかりに、有人探査へと移行する(写真:JAXA/池下章裕氏提供)

 再び月へ。そして火星へ。人類初の月面着陸から50年、壮大な宇宙探査計画が始動した。国を超えて集めた英知で、人類の活動領域がいよいよ地球外へ拡大する。

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「レッド・プラネット(赤い惑星)」として知られる火星全体が茶色一色になった。

 米航空宇宙局(NASA)が撮影した火星の衛星画像。2018年5月28日の段階では、雲もほとんどなく、赤っぽい地表や地形がはっきりと見えていた。それが1カ月後の7月1日には、まるで土色の液体を頭からかぶったかのように、きれいにコーティングされた。

 想像を絶する大規模な砂嵐の発生だった。しかも、大気のかなり高いところで吹き荒れた。この時、火星の表面を動きながら観測活動をしていたNASAの無人探査車「オポチュニティー」が撮影した画像を見ると、地上は砂嵐によって光が完全に遮られ、昼間なのに真っ暗闇に包まれていた。

 数カ月続いたという大規模な砂嵐の影響で、オポチュニティーは太陽電池パネルで発電できなくなり、充電も使い切って6月10日を最後に音信不通に陥った。04年1月に火星に着陸して以降、14年以上に及ぶ地上探査で21万7千枚以上の画像を地球に送り、水の存在や生命の存在できる環境があった可能性を発見したオポチュニティーは、これまでの天体探査車の最長走行距離(45キロ)を残し、その役割を終えた。

 日々、様々な発見が続いている宇宙。その探査が急速に発展したのは、様々な技術が急激な進歩をみた、ここ十数年のことだ。例えば、18年前までは、太陽系にはまだ九つの惑星があると信じられていた。

 水金地火木土天海冥。

 太陽から近い順に惑星を覚えるため、学校でそう習ったのを覚えている。それが一時期「土天冥海」に変わり、現在では冥王星が消えて「土天海」までの八つが太陽系の惑星になった。06年に惑星の定義が改められ、他の八つとは軌道の形や角度が異なる冥王星が、準惑星に位置づけられたためだ。

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