星雲と銀河の区別がはっきりしなかった時代の名残で、「アンドロメダ銀河」を今でも「アンドロメダ星雲」と記憶している人がいるように、謎多き宇宙の実態に関する記述は、教科書でもたびたび変更を余儀なくされてきた。しかし、数々の発見が相次いだ今も、いまだ不明なことの方が圧倒的に多い。

 そんな宇宙の探査が今、新時代を迎えた。国際協力で合意されたロードマップに沿って、人類の活動領域を地球外に広げるという夢のような計画に着手したからだ。

 各国の政府や宇宙機関、産業界や学界が連携して目指すのは月、そして火星だ。学術的な調査にとどまらず、将来的には人が滞在することを目標にしている。宇宙探査による新たなビジネスチャンスの創出まで念頭に置いた、壮大な計画だ。

 今年3月12日に都内で開かれた国際宇宙探査シンポジウム。宇宙飛行士で宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事の若田光一氏が、国際宇宙探査計画の全体像を説明した。

「国際宇宙探査とは、有人宇宙活動と、それに向けて先行する無人探査活動を指し、国際協力で推進されます。範囲は、国際宇宙ステーション(ISS)が飛ぶ地球低軌道より遠方の領域で、当面は地球の衛星である月の周回や月面を含む月全体、さらにはフォボスとダイモスの二つの衛星を含む火星を計画している。目的は、人類の活動領域の拡大と、探査で得られる知的資産の創出への貢献です」

 若田氏によると、宇宙における人類の活動領域は、「地球は青かった」の言葉で知られるソ連(当時)のガガーリン宇宙飛行士が世界初の有人宇宙飛行に成功した1961年以降、約20年周期で広がってきたという。

 有人宇宙飛行の黎明期となった60年代は、米ソ間の急速な開発競争の下で宇宙船技術などが急速に発展。今年50周年を迎えるアポロ11号の人類初の月面着陸も69年7月20日だった。

 80年代には、米スペースシャトルや、ソ連からロシアにかけて運用された宇宙ステーション「ミール」などで、人間が宇宙に滞在する能力が確立された。

 00年代は国際協力の時代を迎え、ISSによる地球低軌道での持続的な長期滞在が当たり前になった。有人宇宙船「神舟」や宇宙ステーション「天宮」に代表される中国の有人宇宙活動も急速に発展した。(編集部・山本大輔)

AERA 2019年4月15日号より抜粋