根本昌夫(ねもと・まさお)/1953年、福島県生まれ。元「海燕」「野性時代」編集長。島田雅彦、吉本ばなならを発掘。2002年から朝日カルチャーセンター、早稲田大学エクステンションセンター、法政大学等で小説講座を担当(撮影/写真部・片山菜緒子)
根本昌夫(ねもと・まさお)/1953年、福島県生まれ。元「海燕」「野性時代」編集長。島田雅彦、吉本ばなならを発掘。2002年から朝日カルチャーセンター、早稲田大学エクステンションセンター、法政大学等で小説講座を担当(撮影/写真部・片山菜緒子)

 改元をはさんだ今年のゴールデンウィークは破格の10連休。降ってわいた長い休みは思い切って何かを変えるチャンスだ。いつかやろうと思っていることがあるのなら、スタートを切るのは、いまだ。

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 小説を書いてみたい──。そう思う人たちが集う教室がある。

 金曜の夜。若者からリタイア世代まで幅広い年齢層の受講生が三々五々集まってくる。
「今日はこの作品からやっていきましょう」

 400字×25枚の短編。受講生全員が順番に感想を言い、最後に先生がコメントする。
「すごくいいですね。短編として完璧にできています」

 石井遊佳さん(55)と若竹千佐子さん(65)、ふたりの芥川賞作家が輩出した根本昌夫さん(66)の小説教室。朝日カルチャーセンター新宿校の講座は、多くのキャンセル待ちがあるという。

 東京都在住の51歳の女性は、医療事務の仕事のかたわら昨年7月から受講している。

「皆さん文章が好きなので、より良い作品になるにはどうすればいいかを本人のように考えて真摯な意見を聞かせてくれる。合評は毎回とても刺激的です」

 当初根本さんは、小説の書き方を学びに来ることに対して懐疑的だったが、受講生の作品を読んで考えを変えた。

「無名の人の作品でもいい小説があると逆に教えられました」(根本さん)

 教室には弁護士、主婦、僧侶などさまざまな人が集まる。ここではニートも医者も対等。多様な人が小説について話す。そういう場所はあまりないのではないかと根本さんは思っている。

「プロになる必要はないんです。小説を書いてみることで人生を生き直す。書くことで自分って何なのかちょっとでも知っていくというのかな」(同)

 小説を書きたい人にお勧めの10連休の過ごし方がある。

「好きな作品を再読するといい。いい作品は年齢によって違ったように読める。これが小説を書く第一歩になります」(同)

 憧れの俳優が自分が書いたせりふを読んでくれるかもしれない。そんな魅力的な職業が脚本家だ。内館牧子さん(70)、岡田惠和さん(60)など有名脚本家が輩出している東京・表参道のシナリオ・センター。約50人の受講生が講義に聞き入っている。

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