指導者になってほしいという思いは同じでも、「私の発想はプロの監督とは全く逆」と話す人がいる。イチローの地元、愛知県豊山町野球スポーツ少年団の指導者、川村武さん(78)はイチローに「子ども向けのテレビ番組をやってほしい!」と期待している。

 イチローは小学校3年生から6年生まで、地元の少年団に所属した。当時からイチローの野球センスは抜群で、ムチのようにしなる動きや体形が印象的だったという。

「引退は驚きました。大きな記録を作っても毎回『通過点』と言い続けてきた彼にとって、不振も一つの通過点だったはず。もっとやれたのに、と。でも会見は穏やかな顔に見えました。子どもの頃から苦労や努力を表に出さなかったけど、それがいっぺんに出て、逆にあの明るい表情になったんでしょうね」

 川村さんがイチローに期待するテレビ番組は、全国ネットで、たとえば週に1回。野球の技術面はもちろん、夢に向かって努力する大切さなどイチローの考え方、自らの辿った道について語りかける。あるときは小学生に向けて、あるときは高校生に向けて。生放送にして、親子で見てくれたら。

プロ野球選手みたいにある程度できあがった大人にプラスで何か教えるというよりも、将来ある子どもの指導に携わってほしい。もちろん、日本に住んで子どもたちにあれこれ教えるための全国行脚なんてしてくれたら、さらに理想ですけどね」(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年4月8日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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