今後、FAAなどの当局やボーイングが、システムの不具合を二つの事故の原因として正式に認める可能性が高そうだ。

■賠償など5千億円超も

 事故と各国の航空当局の運航停止を受け、ボーイングの株価は一時、急落した。12日のニューヨーク株式市場では前日比6.1%安の375.41ドルとなり、事故後の2日間で計11%超の下落率を記録した。一方で、トランプ大統領が運航停止を命じた後は反発し、0.46%上昇した。

 モルガン・スタンレーの航空業界のアナリスト、ラジーブ・ラルワニ氏は「運航停止は一時的なもので、買いのチャンスだ」とのコメントを発表。ボーイングにはすでに多数の各国の航空会社との契約があり、改修を終えた737MAXの引き渡しにより、安定した収益が見込めるという見方だ。ただ、それでもボーイングには「事故の対応などで50億ドル(約5600億円)以上の負担が増える」との米メディアによる報道も出ており、ボーイングの経営への影響は見通しにくい状況だ。

 日本の航空会社では、ANAホールディングス(HD)が2021年度以降に737MAX8を最大で30機購入する計画を発表している。スカイマークも購入する計画だが、具体的な機数や時期は示していない。

 両社とも現時点で購入計画は見直しておらず、「状況を注視したい」(ANAHD広報)との方針。ANAHDの場合、21年度以降と2年以上先なため、改修が終わっている可能性が高い。最新鋭の航空機では、13年にボーイング787でバッテリーが発火する事故が発生したように、不具合やトラブルが起きることも多いとされている。ANAHDが世界に先駆けて導入した787とは違い、737MAXの導入が進んでいなかったことは、国内の航空会社にとっては不幸中の幸いと言えるかもしれない。(ジャーナリスト・小松武廣)

※AERA 2019年3月25日号