一方、TPPを米国がターパイ(倒牌)したおかげで、日欧EPAが加速し、ついに2月に発効と相成りました。欧州にしてみると米国への当てつけもあったんでしょう。ただ、結果的には世界最大、かつ画期的なものとなり、我々消費者にとってのメリットは実に大きい。

 ワインラバーのワタクシとしては15%の関税がなくなると、俄然欧州ワインが安く見えるわけです。TPP11発効で新豪勢も加わっており、価格競争の激しい農産物にとってこの両協定の影響は非常に大きい。状況としては米国の一人負け。米国の農家からしてみるとたまりませんよね。

 二国間貿易条約交渉を加速したい米国は日本との間で「TAG」という協定を模索していますが、内政問題を抱える中、お膝元のカナダ、メキシコとはUSMCAを進めねばならないし、米中通商協議という課題まで抱え込んでしまった。ライトハイザーのUSTRがいくら優秀でも、これ以上は物理的に無理です。米中に関しては最終的にトップ会談にゆだねられそうではありますが、両国とも既に3月1日の交渉期限については延長の構えで、すなわちまだまだ交渉継続ということです。

 日本と本気で貿易交渉をする前に片付けねばならない宿題があまりにも多く、そうこうしているうちに3月29日には「ブレグジット爆弾」が降ってくる。米国の立場からするととても日米交渉どころではなく、2019年以内に何かが起きるとは到底考えられません。ある意味「漁夫の利」を得る、でありまして、日本は非常に有利な立場にあるんであります。

AERA 2019年2月18日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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