プログラミング教育が必修化で現場に広がる悲痛な声… それでも取り組むべき意義とは?
連載「61歳の新入社員 元校長のプログラミング教育奮闘記」
61歳で公立小学校の校長を定年退職した福田晴一さんが「新入社員」として入社したのはIT業界だった! 転職のキーワードは「プログラミング教育」。今回は、福田さんがプログラミング教育に取り組んていた校長時代の話です。
【天沼小でのプログラミング授業の様子はこちら】
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私が60を過ぎて、公立の校長からプログラミング教育指導員として全国行脚することになったのは、最後に勤務した東京都杉並区の天沼小学校での経験が大きいことは明らかだ。
天沼小学校は、各教室に電子黒板と書画カメラがあり、4年生以上には1人1台タブレットが配備されるという環境が整っていて、高学年児童は教科書・ノート同様にタブレットを小脇に抱え教室移動している景色がごく普通にあった。
なぜそれが可能だったのか。
天沼小学校が現在の新校舎になったのは2011年。文部科学省が推進する「エコスクール」という名の下、環境面にも配慮された、機能的な新しい校舎だったので、教育委員会も天沼小学校を当初からあらゆる教育面での「モデル校」にイメージしていたのだと思う。モデル校や推進校になると、ICT環境のインフラ整備のための予算が教育委員会にある。杉並区が、ICT環境を充実させたいというベクトルもあり、天沼小学校は児童用端末の整備を早々に充実させることができ、我流ではあったが、タブレットを使った協働型の授業や情報モラルなどは行っていた。
そんな折、2016年の春に「小学校プログラミング教育の必修化」というニュースが、飛び込んできた。産業競争力会議での安倍首相の「日本の若者には、第四次産業革命の時代を生き抜き、主導していってほしい。このため、初等中等教育からプログラミング教育を必修化し、一人ひとりの習熟度に合わせて学習を支援できるようITを徹底活用します。」の発言である。
この発言を受けて、それまで文部科学省が長年かけてきた新学習指導要領の改訂作業に、一気にプログラミング教育導入の議論が盛り込まれた。
中学校においては、技術・家庭科の中で、従来も扱われてきた学習内容だか、小学校においては皆無な状態からの導入プロセスとなった。新学習指導要領の告示の期日が迫る中、短期間のうちに3回の有識者会議が開催され、安倍首相の発言の2カ月後には「議論の取りまとめ」が公表され、新学習指導要領に盛り込まれるという急展開だった。
