※写真はイメージです
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 共働き家庭にとって、子どもの小学校入学以降を安心して過ごすため、なくてはならない存在が学童保育だ。近年、利用者が急増している。その現場で基準緩和をめぐり不安が広がっている。

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「我々が働く現場を見てよ、とお偉いさんに言いたいです。今はギリギリでまわっているけれど、全く余裕はありません」

 関東地区のある学童保育で支援員をする女性(46)の声だ。子育てが一段落した2年前、知人の紹介で正規の職員としてこの職に就いた。面接では「子どもと遊べばいい」と言われ気楽に足を踏み入れたが、現場はハードだった。

 交代制で6時間勤務と聞いていたが、夏休みは職員が足りず10時間超えの勤務が続いた。発達障害の子もいれば食物アレルギーがある子もいて、個別に対応するのはかなりの労力がいる。学校との連携や保護者をケアするための情報共有も欠かせない。

 やることは山積みで、支援員はお茶を飲む時間もトイレに行く時間もなかなかとれないほどだ。毎日早く出勤して仕事をこなしても、給料は増えず残業代の概念もない。

「子どもたちはかわいいし、すごくやりがいのある仕事だけれど、正直きついです」

 学童保育は、共働き家庭など保護者が放課後の小学生をみられないケースで、代わりに保育をしてくれる仕組みだ。小学3年生までが対象の場合が多い。保育園に頼っていた親たちが働き続けるための“頼みの綱”だ。

 厚生労働省の調べによると、学童保育は2018年5月時点で全国に約2万5千カ所ある。共働き家庭の増加なども影響して、利用児童数も増えている。16年には全国で109万人超だったが、18年には123万人超になった。

 学童保育の運営形態は自治体や施設によって大きく異なる。運用基準は長い間現場に任されてきたが、15年にようやく「支援の単位(40人以下)ごとに職員2人以上」「うち1人は都道府県による研修を受けた放課後児童支援員」とする2点が「従うべき基準」として定められた。しかし昨年の秋、これらが緩和され「参酌すべき基準」となることが決まった。保護者や職員からは「保育の質を保てるのか」と不安の声が上がっている。

 緩和の背景にあるのは地方からの要望だ。17年夏、内閣府地方分権改革の会議で、都道府県や市町村から「学童保育の実情はそれぞれの地域によって異なるので緩和してほしい」という声が上がった。

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