保育園の待機児童問題と同様に、都市部など人口が流入している地域では学童の利用者数も増加傾向だが、一方、地方の山間部など子どもが激減している地域では、全国一律の規定を当てはめるのは難しい面もある。

 現在の基準では子どもが少なくても2人の職員が必要。中部地方の豪雪地帯にある小規模校では、数年前から学童保育の開設を求める声が出ているものの、登録者が1人のため予算化に踏み切れず、基準の緩和を求めている。

 東京都内で支援員をする男性(55)からも疑問の声を聞いた。

「土曜日は学童に来る子どもの数がすごく減る。以前いた教室では子どもが1、2人のこともザラ。でも職員は2人必要だから休みがとれない。このルールは困りますね」

 また、放課後児童支援員の資格が必要という基準についても、「人手が足りないため、職員が研修を受けようにも現場を抜けられず資格を取れない」「経験豊富で子どもや保護者から信頼が厚い職員がいるが、中卒のため資格を取れない。『高卒以上のみ』を資格の基準とするのをやめてほしい」などといった意見もあった。

 今回の基準緩和について、厚労省子ども家庭局子育て支援課は説明する。

「実際にどんな基準で運営するかは、各自治体が地方議会で議論した上で条例化するので、いい加減な基準になることは考えづらい」

 ただ地域によっては、増える児童がすし詰め状態で、職員の目が行き届いているのか疑問が残る状態の学童もある。

 2人の子どもを学童に通わせてきた千葉県の女性(42)はかつてのことを思い出す。

「上の子が学童に入った6年前は職員さんの数が少なくて、余裕がなさそうでした」

 そのころは、まだ基準がなかった時代。長男が上の学年の子にいじめられたことを学童の職員に伝えたときは、「職員数が少ないので仕方がない」と逆ギレされたこともあったという。

 ここ数年は職員の数が増えて以前よりはよくなったが、まだ十分とは思えない。たまに職員が少ない日はやはり大変そうで、子どもたちもちょっとしたことで叱られているという。

「子どもを見守る目は多ければ多いほどいいのに、基準の緩和で人が減ったりしたら困ります」

(ライター・大塚玲子)

「『事故があればもうアウト』学童保育の基準緩和で現場に不安の声」へつづく

AERA 2019年2月11日号より抜粋