「聖教新聞などの公式メディアでは公明党支援を信仰上の言葉で意義づけないことで、『私たちは選挙活動を強制していない』としつつ、座談会などの宗教的集会では公明党の政策PRのDVDを流したりして『功徳』を語る。それにより、実質的に公明党支援以外の選択肢をタブー化する空気を作ってきた」

 しかし、学会内部から、選挙運動を指示する画像などがSNSによって拡散されると、この「手法」が困難になる。ツイッターなどで「同じ会員でも賛同しない人がいること」が可視化されるようになるので、元来公明党の政策に違和感を持っていた人は同調しやすくなる。批判がタブー視されていた会員たちがSNSに触れることで、その心理的ハードルが下がる効果がみられるという。

「同じ信仰を持った学会員の言葉には教義的な意味での正しさがあり、彼らを一方的に否定することは教義上のタブー(法華誹謗)にもなり得るという心理も働きます」(現役会員)

 創価学会も、今は世代交代も含めた過渡期。SNSで可視化される時代だからこそ、内部からの批判へどう応答していくかが問われている。「学会員の公明党支持は絶対なのか」「公明党への支援拒否を理由に指導や降格はあるのか」を創価学会に聞くと「そのようなことはございません」と回答した。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。

「公明党幹部は『今年は選挙が全て。党を締め直していく』と断言している。春の統一地方選は勝てると踏んでおり、夏の参院選に全てをかけている。16年の参院選同様、愛知、兵庫、福岡の3選挙区に新人を擁立する方針で、そこに全総力を結集させるつもりだ。学会員が動揺しないよう、参院選前には憲法改正の発議はせず、衆参ダブル選は絶対阻止と決めている。選挙を見越して、公明党からは今まで以上に創価学会を意識した言動が増えていくだろう」

 公明党の選挙への危機感は、創価学会における団結力の危うさと通底する。亥年選挙を前に、両組織とも「試練」を抱える。(編集部・作田裕史)

AERA 2019年2月4日号より抜粋