実際に見られているかどうかは関係ない。視線ではなく反応も含まれる。ネット上の振る舞いについては、特定の人物ではなく「世間」も対象となり、

「世間にどう見られているか」
「世間はどう反応するか」

 も過剰に意識する。

 男性も、ツイッターでこの言葉を知った。

「たぶん僕も『視線耐性』が低いってことになるんでしょうね」

 この男性のように、自己肯定感が低くなくても、耐性が低いケースもある。

 男性化粧品ブランド「ギャツビー」などで知られるマンダムによれば近年、他者からの視線にストレスを感じたり、怖いと思ったりする人の割合が増えているという。同社の昨年の調査では、「他者の視線にストレスを感じたことがありますか?」という問いに全世代平均で56.5%、10代、20代に限ると67.6%がある(「とてもよくある」「たまにある」の合計)と答えた。「相手の目を見て話すことが苦手ですか?」に対しても、全体の43.8%、10代、20代の53.5%が苦手(「とても苦手」「やや苦手」の合計)と答えた。若い年代に多いことがうかがえる。

 視線は人間関係の入り口だ。視線耐性が低いとコミュニケーションに支障をきたす。恋愛でもビジネスでも、コミュニケーションは視覚からスタートすることが多い。目を見て話せない人、自分を見られたくないと思っている人はそれだけで「圏外」になってしまうだろう。視線耐性が低いことで、縁談や商談がうまくいかない例は枚挙にいとまがないという。

 PR会社に勤務する男性(28)も、視線耐性の低さに悩んだひとり。清潔な服装でさわやかなイケメン。担当ブランドを広く売り込む仕事、初対面の記者と会話するときも目をそらさない。とても視線耐性に悩んだとは思えないが、10年前、大学に入学して最初のオリエンテーションで前に座った女子学生が話しかけてきたときは、どうしていいかわからずに手が震えた。

「相手から自分がどう見えているのかと考えて、パニックになってしまった。こっちを見ないでと念じながら、目を伏せることしかできませんでした」

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