ただ、スマホの普及が一段落したこともあって契約者数は頭打ちに。政府による値下げ圧力に加えて、今年10月には第4のキャリアとして楽天が新規参入してくる。当然ながら楽天は低料金で攻めてくるものと思われるだけに、熾烈な料金競争で今後、通信料金収入の増加は期待できない。
ドコモは通信料収入の伸び悩みを補おうと、自社でコンテンツやサービス開発を積極的に行い、ユーザーに提供してきた。ユーザーに対して、情報というオプションを売ることで、収益を伸ばすというビジネスモデルで、ソフトバンクも同様のモデルを模索してきた。
しかし、ソフトバンクの宮内謙社長はこうしたコンテンツサービス依存からの脱却を目論む。
「この10年、ソフトバンクのスマホユーザーに対して、動画や音楽のサービスを提供し、月額500円を取っていたが、やめてしまった。餅は餅屋。コンテンツサービスを新規に立ち上げても、海外勢に対抗するのも難しい。それよりも、スマホの価値を上げるサービスの普及に全力を注ぎたい」と語る。
その具体策が、SBGやビジョン・ファンドの投資先企業のサービスを国内で展開する事業だ。すでにシェアオフィスサービスの「ウィーワーク」や、中国のタクシー配車サービス「ディディ」を国内で展開しており、グループ全体の新たな収益源にしたい考えだ。
もうひとつ、ソフトバンクが注力しているのが人ではなく「モノ」の通信だ。
「IoTがチャンスになる。製造業、流通業など、工作機械や車など、あらゆる機器を通信に対応させていく。様々なものから情報が集まれば、それがビッグデータになり、クラウドに蓄積され、そのデータをAIが分析していく。これによって、あらゆる産業が一変するのではないか」
宮内社長はそう期待する。
ただ、様々なモノを通信に対応させたとしても、流れるデータ量はごくわずかであり、通信料金で稼げるわけではない。通信機器と通信料だけでなく、それを管理するシステムなどをまとめて提案し、企業に導入してもらうことで稼ぐというビジネスモデルを強化していく必要がある。
これまでソフトバンクの成長を支えてきたiPhoneは今、世界的な販売不振が伝えられている。上場したばかりのソフトバンクが問われているのは、一刻も早くiPhoneに代わる事業の「核」を生み出せるかどうかだ。(ジャーナリスト・石川温)
※AERA 2019年1月28日号より抜粋