──演じた悠輔については、どう感じましたか?

 台本を読んで、共感できるし、親近感がわきました。ありがたいことに、自分とかけ離れたキャラクターというのはこれまでやったことがないんです。橋本光二郎監督(45)もそれをわかってくださって、お芝居の面では任せていただいた部分もあります。悠輔の持つ、まっすぐな不器用さは僕に似ていると思うし、素直になれずに突き放したりする性格は「僕もやりそう」と感じましたから、自然に演じられました。

 ただ、「ホットロード」でもそうだったんですが、なんで僕はいつも「ドSキャラ」なんだろうとは思いました(笑)。常に女の子に向かってキレているんですよ。僕は出会っていきなり説教始めたりはしませんし、もうちょっと優しいです(笑)。

──俳優業で得たものは?

 身近なスタッフやメンバーから「表現の幅が広がった」と言われました。特にプロデューサーのHIROさんには「歌の聞こえ方が違う」と。歌手と役者は違うジャンルだと思いますけど、何かを人に伝える“表現者”という点は同じです。その部分で、俳優業で何かしらのものを得て、あまり自覚はないですがアーティスト活動に持って帰っていたんだと思います。メッセージを発信するとき、エモーショナルなものを自然にのせられるようになったのかなと思います。

 そういう意味でも、この作品が僕のターニングポイントになることは間違いないです。

──これから俳優としてやってみたい役などはありますか?

 うーん……役者をやりたくないわけではありませんが、大変さを肌で感じていますから、生半可な気持ちではできないと思います。覚悟が必要だな、と。僕が役者一本なら、次に何をやりたいか明確なんでしょうけど、やっぱり第一はアーティストなので、「次の作品」が想像できないんです。「ホットロード」が最後の映画だと思っていましたし、今回が僕の引退作になるかもしれませんね(笑)。

 ただ、今回のように熱心に僕を必要としてくれる人がいらして、心を動かされたら、そのときにまた考えると思います。(ライター・早川あゆみ)

AERA 2019年1月14日号