イラスト:飛田冬子
イラスト:飛田冬子

 都内に住む女性会社員(40)は、自身と夫(38)のきょうだいの将来のことを考えると気が重くなる。女性は弟が1人、夫は姉が2人いるが全員独身。義姉たちは就職氷河期に大学を卒業後、非正規雇用を転々としている。正社員の弟はまだしも、義姉たちは退職金も見込めず、年金も国民年金だけで月に5万~6万円ほど。将来、日常的な介護はヘルパーを頼ったとしても、訪問介護や入院の手続きなどの際にはサポートが必要だろう。その頃には自分も高齢の身。

「自分たちを含めて5人分の負担が、姪である7歳の一人娘の肩にのしかかるかもしれないと考えると、頭が痛いです」

 一方、独身の立場からは、「勝手に重荷に感じないで」「自己責任と言われても」という嘆きも。都内で両親と住む契約社員の女性(45)は70代の母親や二つ上の既婚の姉から「独身のままだと将来は甥や姪に迷惑をかける」と言われ続け、婚活した時期もあったが実らなかった。金銭的な面で甥の世話にならないよう貯蓄型保険に入った。

 首都圏の自治体で臨時職員として働く男性(43)も、

「就職氷河期に社会に出て、何度挑戦しても正社員になれずに低所得で結婚も子どもも諦めざるを得なかった。社会から見放され、家族からも厄介者扱いされてどうしたらいいのか……」

 50歳の時点で一度も結婚歴のない「生涯未婚率」は上昇を続け、2015年の国勢調査では男性が23.4%、女性は14.1%。アラフォーの就職氷河期世代が50歳になる頃にはもっと高まる予測だ。こうした単身者の老後は誰が支えるのか。

 内閣府の「14年度一人暮らし高齢者に関する意識調査」によると、子どものいない高齢単身者が主たる介護を頼みたい相手は「ヘルパーなど」(72.3%)に次いで「兄弟姉妹」を挙げる人が11%程度いた。ただ、少子化が進む中で兄弟姉妹数が減り、次の世代となるとさらに少なく、家族だけで支え合うのは難しい。日本福祉大学教授でみずほ情報総研主席研究員の藤森克彦さんは言う。

「世帯の力が弱まっている中、家族依存型の福祉国家ではまわらなくなっている。支える仕組みを考え直す時期にきている」

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