「ゲノム編集された人間の双子誕生」発表の衝撃 デザイナーベビーの悪夢とは?

山本大輔AERA
 秘密のベールに包まれてきたゲノム編集による双子の誕生は、突然の発表で表面化した後、再びベールで隠された。今も多くの謎を残したままだ。

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「ゲノム編集を行った受精卵から、健康な双子の女児を誕生させた」

 11月28日、香港であったヒトゲノム編集の国際会議。一人の中国人科学者が講演で公表した研究成果が、「パンドラの箱を開けた」などとして世界中から批判を集めている。

 科学者は南方科技大学(中国・深セン[※センは土編に川])の賀建奎副教授。エイズウイルス(HIV)に感染した男性と感染していない女性の受精卵に、遺伝情報を改変するゲノム編集を行って、HIV免疫を持った双子の女児を誕生させたという内容だった。さらに別の1組が妊娠初期の段階にあるとして、2例目の誕生の可能性も明かした。

 ゲノム(全遺伝情報)を人工的に編集する技術は、通常よりも肉厚の「マッスル真鯛」、収穫量の多いコメ、腐らないトマトを生み出すなど、すでに品種改良の分野で成果を出している。人間に対するヒトゲノム編集でも、遺伝的な難病治療といった医療分野で研究が加速しており、現在の医学では完治できない病気の患者や家族にとっては新たな希望になっている。

 ただ、遺伝子操作で特定の能力を人工的に高めたり弱めたりする、いわゆるデザイナーベビーの誕生にもつながるため、「神の領域」と懸念される両刃の剣でもある。こうした倫理的な観点から、ヒトの受精卵段階でのゲノム編集はタブー視されてきた。技術の急速な進歩に法整備が追いついていない現状で起きた今回の賀氏の発表は、ヒト受精卵へのゲノム編集で誕生した初めてのケースとなるが、証拠は何も示されておらず、事実を疑う声も出ている。

 中国からの報道によると、賀氏の研究は、HIVが感染する時に必要な受容体をゲノム編集で破壊することにより、ウイルスの受け皿をなくし、感染を防げるようにしたというものだ。

 実際にそんなことが今の技術で可能なのか。本誌2月12日号に掲載したゲノム編集の特集記事で、その仕組みや可能性を解説してくれた自治医科大学医学部(栃木県下野市)の大森司教授は、こう話す。

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