「芸をどう変化させていくか、ドキュメンタリーとして見せていきたい。はじめてのお客さまにはやさしくて、常連のお客さまには三振も大ホームランも見せたい。全部の会で違う顔を見せたいですね」

 前のめりで崩れる三振、前のめりでのホームラン。何度も「前のめり」という言葉を使った。

 寄席の客席で過ごす時間が長いほど、いい芸人になることができるという持論がある。観客目線はプロになってから生きるからだ。

「忙しくてもネタおろしをしてくれる芸人、守りに入るんじゃなくて前のめりで滑る芸人を、観客時代のぼくは信頼していました。観客時代の自分の疑問に答えてくれる講談師を探して、『神田松之丞』が生まれたんです。あの頃のぼくが見たら、きっとそう言うんじゃないかな」

(編集部・澤志保)

※AERA 2018年12月10日号より抜粋