写真:写真部・小原雄輝、イラスト:小迎裕美子
写真:写真部・小原雄輝、イラスト:小迎裕美子
日本人の「現金好き」は将来も変わらない?(AERA 2018年11月26日号より)
日本人の「現金好き」は将来も変わらない?(AERA 2018年11月26日号より)

 何かと耳にする機会が多くなったキャッシュレス関連のニュース。利便性は分かっている。だけど、なんだか踏み切れない人もいる

【日本人の「現金好き」は将来も変わらない?電子決済比率の変動予測はこちら】

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 立派な財布なのだろう。やわらかそうな革製で、色も使い込んだ光沢を放っている。有名ブランドで高価だっただろう。

 と言っても、今や立派になっているのは「体格」だけど。お札を折らないで入れられる長財布タイプのはずが、インパクトがありすぎて厚さが10センチほどあるようにしか見えない。開いてもらうと、まず目につくのが紙くず……いや、レシートの山。2、3枚引っ張り出したら、どれも何重にも折れ曲がっている。無理に押し込んだのがすぐにわかる。

 この手の財布を「ブタ財布」というらしい。レシートやポイントカードをはじめ、多くのものを詰め込んでパンパンに膨れ上がった「肥えた財布」という意味だ。その持ち主、30代の会社員女性が真顔で語る。

「レシートって、どうしても捨てられないのよ。下着で外を歩いているみたいで」

 たしかに、レシートに書かれた情報を見ると、その人のプライベートが頭に浮かぶと言ってもいい。あるレシートには1カ月ほど前の深夜にコンビニでケーキを三つ買ったと記されていた。そういう食生活だったのか。

 よく見ると、絆創膏も埋まっていた。なんで?

「靴擦れでしんどい思いをしたことがあって。備えあれば憂いなし」

 財布も手入れを怠ると、肥えていく傾向にあるようだ。CCCマーケティングが昨年1月に実施した調査によると、30~39歳の女性が財布に入れる各種カードは平均12.1枚。15~19歳女性の8.9枚と比べると、財布も順調に「成長」している。工業規格どおりにつくられたプラスチック製カードだとすると、重ねれば厚さ1センチほどになる計算だ。

 それにコイン。冒頭の「ブタ財布」にも、うなるほど入っていた。SMBCコンシューマーファイナンスの昨年10月の調査では、20代の財布の中身は平均9408円。コインは最低8枚になる。多いと感じるだろう。

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