進学校のイメージが強い開成中・高だが、学校の活動は勉強一辺倒ではない。

「学校行事でも、部活でも、自分がやりたいことに存分に取り組める環境を用意しています」

 開成ではボートレースや運動会など多様な学校行事が年間スケジュールに緻密に組み込まれ、中学・高校の6学年が一致して取り組む。70を超える部活動・同好会も盛んだ。ボート部は昨年、全国高校選抜に出場した。サッカー部には200人近い部員がいて、都の中学大会などで活躍している。数学五輪や情報五輪などで好成績を収める生徒もいる。

「やりたいことに自由に取り組め、勉強以外でも抜きんでた生徒が一目置かれる。評価の軸が多様なのが開成のマインドです」

 開成中に入学する生徒は、小学校時代は成績がトップクラスだった子ばかり。しかし、入学して2カ月半後にある中間試験では、クラス内で明確な成績の順位がついてしまう。

「生徒の中には、それまで見たこともないような順位になってしまう子もいます。その生徒たちに劣等感を抱かせず、どう乗り越えさせるかは、最も重点を置いて取り組んでいる教育です」

 だからこそ、生徒に勉強だけではない多様な居場所をつくっているのだという。

 子育てでも、ポイントは同じ。

「本来、子どもは千差万別。我が子の成長が他より少し遅かったり、周りと違ったりするのは不安でしょう。でも、子どもが笑顔で、親にまとわりついてきて、そして体重が増えていれば何も心配することはありません。子育ては大成功です」

(編集部・川口穣)

AERA 2018年10月29日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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