稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
持参容器もプラスチックという矛盾…しかし使い捨てないということで許していただく(写真:本人提供)
持参容器もプラスチックという矛盾…しかし使い捨てないということで許していただく(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】持参容器もプラスチックという矛盾…

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「脱プラごみ生活」を誓ったものの、いざプラスチックに覆われていない商品を探すと……ほぼゼロじゃないか! ということに今更ながら気づいた私。食品も下着も日用雑貨もことごとくプラで覆われておるではありませんか。

 で、一体なぜなのかとよく観察した結果、なるほどなーとうなってしまったのです。

 プラで覆った商品は「効率的」なのです。あらかじめパッケージされているので、客はレジに持っていくだけ。店の人も計算するだけ。いちいち計ったり包んだりしなくていいし、客も余計な会話をしなくて済む。つまり、昔は当たり前だった「対面販売」の終焉とプラスチックの蔓延は密接に関連しているのです。

 考えてみると確かに、肉屋さん、魚屋さんといった個人店からスーパーへ、そしてさらにアマゾンなどのネット販売へと効率化が進むほどに、パッケージは過剰になっていく。つまりは人々のコミュニケーションが希薄になるほどパッケージは分厚くなっていく。プラ社会とは孤独な社会とセットなのです。

 で、そんなプラ社会を一人勝手に脱するのは、実に大事業でありました。まずはワガママに耳を傾けてくれそうな個人店を見つけ、常連になり、慣れてきたところで容器持参で買い物。つまりはタッパー持参で豆腐を買い、丈夫な袋持参で米を量り売りしてもらう。カフェではプラ入りおしぼりを感じ良く(これが案外難しい)断り、自動的に出てこなくなるまで通い続ける。

 ……ああどれもこれも非効率この上ない地道な「工作」の連続。一人スパイ大作戦。しかし考えてみれば、これはプチ革命です。つまりは世の流れを逆流させようとしているのだから手間がかかるのは当然。泣き言を言ってる場合じゃない。

 で、まだまだ革命成功には程遠いですが、その成果はプラごみ削減にとどまらなかったのでした。ふと気づけばあちこちの店の人とすっかり知り合いになっている。まあここまでやれば当然だわな。にしても、やはりプラと孤独はセットだったのでありました。

AERA 2018年10月15日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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