チョコフレークとは対照的に、「手が汚れないお菓子」として度々紹介されるのがカルビーの「じゃがりこ」だ。同じくジャガイモを揚げたポテトチップスと違うのは、指が汚れる原因となる味付けパウダーが「後かけ」ではなく「スナックそのものに練り込んである」点だ。

 しかし、じゃがりこが発売されたのはスマホ普及以前の1995年。スマホユーザーを意識して開発されたものではない。同社広報部は「たまたまスマホユーザーとの親和性があった」と説明する。

 カルビーは、消費者の生活行動の変化を念頭に手を汚さずにポテトチップスを食べられる専用トング「ポテトチップストング」を開発。スマホやキーボードを触りながらでもポテチが食べられる夢の商品としてキャンペーンを展開した。しかし、これも一部のコンビニで期間を限定したもので、全ての商品の開発に際し、スマホとの相性を意識しているわけではないと同社広報部は説明する。

「確かにお菓子を食べる時に指を汚したくないというお客様の声があるのも事実ですが、反対に手を汚しながら食べるのがお菓子の醍醐味という人もいます」

 そんな中、躍進し続けているチョコレート菓子がある。ネスレ日本の「キットカット」だ。同商品は、10代に好きなお菓子を聞いたテレビ番組のランキングで上位に入るなど、若年層の人気が高い。

「スマホとの相性よりも、単なるチョコではなく、どんな場面で誰と食べたいのか。そんな物語がなければ支持されないと思います」(ネスレ日本メディアリレーションズ室の平松拓也さん)

 キットカットはその呼称が「きっと勝つ」と似ていることから、受験生が験担ぎに食べる現象が有名になった。お菓子もスマホなどと同様、ブランド力だけに頼るのではなく、ユーザーとメーカーでつくる物語がないと生き残ることができない時代に突入したと言っていい。(編集部・中原一歩)

※AERA 2018年10月15日号