一方、猛暑も物価を押し上げている。東京中央卸売市場の取引価格は7月最終週、キャベツが10キロ当たり高値2376円と前年同月を2割上回ったほか、大根やニンジンなどの主要品目が前年同月を上回った。入荷量は白菜が25%、キャベツが15%ほど減少。猛暑に加え、西日本豪雨による生産量減少、ガソリン代高騰による輸送コストの増大などが重なった結果だ。

 畑作に加えて、酪農業も猛暑に悩んでいる。栃木県北部の那須塩原市で酪農業を営む星和也さん(42)は、祖父の代から乳牛を飼育している。冷涼なはずの那須高原も今夏は30度を超える猛暑に見舞われた。「霧を吹きかけて牛の体温を下げ、大型扇風機13台を24時間回していますが、乳量は落ちますね」(星さん)

 星さんは「来年は生乳不足になるかもしれません」と表情を曇らせた。暑さで乳牛の繁殖が難しくなっているためだ。

 夏場に受胎した母牛が出産するのは来年春。乳牛は出産2カ月後に乳量のピークを迎えるので、アイスクリーム向けなどの需要が増える初夏に生産量を増やすのが酪農家の経営として理想的だ。しかし、今夏は繁殖を断念した農家が多く、来年は生乳不足が懸念されるという。

「無理に繁殖させて母牛を死なせては……。今は暑さから牛を守るので精いっぱいです」(同)

 星さんは滝のように噴き出る汗を拭おうともせず、照りつける太陽を見上げた。(経済ジャーナリスト・大場宏明)

AERA 2018年9月3日号