メガバンクの雄、三菱UFJフィナンシャル・グループの優待廃止に対して市場はネガティブな反応を示さなかった。株主還元は配当で、というリリースに納得
メガバンクの雄、三菱UFJフィナンシャル・グループの優待廃止に対して市場はネガティブな反応を示さなかった。株主還元は配当で、というリリースに納得

 今から20年以上前、200銘柄台だった株主優待付き銘柄。現在は1400銘柄台にまで増えている一方で、ひっそりと優待を廃止する企業もある。

 2017年1月から2018年5月までに株主優待の廃止を発表した企業は17社(上場廃止企業を除く)。理由としては合併による優待廃止もあるが、業績不振企業のリストラ策もある。だが、悪い理由ばかりではない。

 配当などへの利益還元の一本化を理由に優待を廃止するケースだ。要するに「優待品を送るコストをかけるのはやめて、そのぶん、配当を増やしますよ」という話。

 典型例は、三菱UFJフィナンシャル・グループだろう。2017年9月末の株主対象分を最後に優待を廃止した。「株主への公平な利益還元のあり方」の観点からだという。

 同社の優待廃止を周知する報道発表文には「『利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的、持続的な増加をめざす』という基本方針に基づいて運営していく」とあり、利益成長で株主に報いる姿勢が強調されている。

 ちなみに三菱UFJの株価は、優待廃止の発表後も全く動揺しなかった。メガバンク首位の貫録だろう。市場は「納得した」ということだ。

 経営陣の決意が強く出ているのが東証1部の日東工器。パイプの接続部分である流体継ぎ手の首位メーカーだ。2017年5月、優待廃止とともに、利益の何割を配当に充てるかを示す「配当性向」を30%から40%に引き上げると発表。優待に力を入れるよりも、「配当による利益還元を充実させることがより適切であると判断」したという。

 2018年3月期の日東工器の業績は、バブル期以来26年ぶりに純利益が過去最高を更新。配当は優待廃止発表前の2017年3月期に52円だったが、2018年3月期は71円に増額し、有言実行の見本となった。

 2018年に入って優待廃止を宣言したウェルス・マネジメントも、特別配当の実施を同時発表し、配当による利益還元を前面に押し出した。

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