「敵に向けた刃は絶対に自分にも向くという覚悟。この3本柱を仮面ライダーの軸にしました」

 以降、本格的にシリーズ化した平成ライダーは、試行錯誤しながら前作とは違う世界観を作り続けてきた。ショッカー怪人である仮面ライダーを現代風に落とし込み、怪人に焦点を当てた「555(ファイズ)」。鬼と呼ばれる戦士たちが楽器で戦う「響鬼」、ライダーなのに電車に乗って移動する「電王」、過去のライダーたちに変身する能力を持つ「ディケイド」など、挑戦的な作品が次々と誕生した。白倉さんは語る。

「新しい作品の企画会議では、前作を憎むところから始まるんです。前作から続いてやっているスタッフでも、あんたが脚本書いたんだろうって人でも(笑)」

 石ノ森さん最後のアシスタントであり、「アギト」から「オーズ」まで数多くの平成ライダーのデザインを手掛けてきた石森プロの早瀬マサトさんは言う。

「新しいものを作るということは古いものを捨てていくこと。私自身は石ノ森先生だったらどうしただろうと考えてデザインをしてきたので、そのギャップに悩み続けました。一方で、ファンは古いものが好きなんです。新しいデザインが発表されるごとに『草葉の陰で石ノ森先生が泣いているよ』と陰口を叩かれたものですけど(笑)、でもその気持ちは私も理解できる。ただ、石ノ森章太郎という人は常に新しいものにチャレンジして世界を広げてきた人。だからこの平成ライダーシリーズを見たら喜ばれると思います」

(ライター・大道絵里子)

※AERA 2018年8月13-20日合併号より抜粋