故人をしのぶ遺族がいないのであれば、墓は何のために必要なのか。「遺骨の収納場所」と割り切れば合葬墓で支障はない。合葬墓のニーズは地方でも顕著だ。

 秋田市が今年4月、市営初の合葬墓の申し込みを受け付けたところ、市民が殺到。計1500体分のうち約1千体分が即日完売した。5月の2次募集にも市民が押し寄せ、残り約500体分が即日完売した。

 市は「一定のニーズがあるとは思っていましたが、想定を超える反響でした。家族がいる人も、身内に迷惑をかけたくないという意識が働いているようです」(市生活総務課)と戸惑いながらも、合葬墓の早期増設を検討中だ。

「揺りかごから墓場まで」という福祉の考え方があるが、日本の場合、「揺りかごから死ぬ前まで」が福祉の範疇とされがちだった、と小谷研究員は指摘する。

「墓場についてはこれまで、家族で面倒を見なさい、ということでしたが、家族では面倒を見きれなくなっているのが日本社会の現状なのです」

 そして、こう提言する。

「死後も跡継ぎや家族の有無などで差別せず、公平に弔われる合葬墓を行政の責任で確保すべきでしょう。お墓のスタイルは今後大きく変化していくと思います」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年8月13-20日合併号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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