近頃、街中で和装の着崩れや柄合わせを厳しく注意する人が増えた。それに備え、男性の着こなしのコツを落語家・春風亭昇々さんに聞いた。
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ネットを中心に話題となった「着物警察」をご存じだろうか。
親切のつもりか、街中で見かけた着物姿の人に向かって、着方の不備や柄合わせなどについて警察の取り締まりさながら、いきなり厳しく注意をする人のことを言う。着物警察の多くは中高年の女性で、着方や着物について「こうあるべきだ」という考えを強くもっているようだ。
人前で注意されたことにショックを受け、着物から離れてしまう人もいる。趣味で着物を着ている人ならば、自分でなくとも知り合いの誰かが街中で遭遇しているだろう。
さて各地で花火大会が開かれる夏もまた、着物警察が活動する絶好の機会だ。
猛暑のなかでも、浴衣の売れ行きは好調で、ここ数年はとりわけ男性の浴衣姿が目立つ。だが、足が長くやせている若い男性ほど帯が上がってきてしまい、「まるでバカボン」などと言われがちだ。
着こなしのポイントは無数にあるが、まずは第一歩として帯をしっかり締めるコツを、着姿のきれいさで評判の人気若手落語家・春風亭昇々さんに教えてもらった。
「よくおなかが出ていないと着物は似合わないと言うけれど、やせていてもカッコよく着物を着ている師匠はいらっしゃいます。ただコツはありますね」
昇々さんの指導を受けるのは、東京都にある海城中学高等学校の古典芸能部の部員たち。同部には中高あわせて約40人の部員が在籍し、落語、漫才などを中心に、小学校や図書館など学外でも活動している。
昨年、部員で仕立て上がりの浴衣をそろえて、文化祭でお披露目をした。ところが校内を歩いている間に多くの部員が着物警察につかまり、中には勝手に帯を解かれ、結び直される人も出た。
「初心者なので着方が上手ではありませんが、見知らぬ人にいきなり触られたり、『着方がおかしい』と一方的に言われたことに驚きました」と、高校部長の河野有哉さん。
集まった部員に、まずはいつも通り浴衣を着てもらうと、裾が台形に開いている。