「自分の寸法と違う浴衣は、着方にコツがいるよね。浴衣は下つぼまりを意識して合わせたら、下紐で締めておくと、両手が使えるようになるよ」(昇々さん)

 浴衣の形を作ったら、上前がずれないように片手で押さえながら下紐で結んでしまう。
「僕たち噺家は、帯は後ろで結ぶように、最初から練習します。前で結んで後ろに回すときにも、着崩れてしまうから。練習すればできるようになるので、後ろで結ぶのがお勧めです」(同)

 とはいえ、悪戦苦闘する部員たち。育ち盛りなので、浴衣を買う時に大きめのサイズを選んだのも、難易度が上がっている理由のよう。

「もうひとつのコツは、腰骨のあたりで下紐も帯も結ぶこと。初めのうちは洋服の癖で、ウエストで結んでしまいがちですが、着物は前がはだけてしまう。やせていると上にあがりやすいので、帯を下げるように意識することが大事ですね」

 確かに昇々さんを見ていると、つねに帯に手をやり、少しずつ位置を調整している。

「自分の寸法でない着物を着るのは、難しいんですよ。僕たちの場合は前座として楽屋働きをしているなかで、いろいろな先輩や師匠が、『もっとこうしたほうがいい』と教えてくださるので、いつの間にか着られるようになっていく。慣れも大きいですよね」

 帯の位置が下にあれば、着物もはだけないし「バカボン」とは言われない。着物警察を恐れず、浴衣で出かけてみよう!(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年8月13-20日合併号